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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
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静謐な薄闇の中に、荒い息が聞こえる。
軋むベッド。
ふたり分の重みが擦れて、濡れて縒(よ)れたシーツの皺。
聞こえる水音は、どこから発せられたものかもうわからない。
飽くなき愛の言葉と相手の名前は、消え入りそうに弱々しく、それを闇に消すまいとして、何度も何度も繰り返されて。
あたしは、自身の快楽を求めるよりも、須王の感じる顔が見たかった。
今まで気づこうともしなかった彼の愛の深さが、絶対ありえないという先入観で却下していた彼の激情が、彼の身体から伝わってくる。それが深く強ければ強いほど、彼を失望させたくなくて。
せめて身体ぐらいは、彼の好きなように……と思っていたのに、好きな相手に抱かれるという行為は、思った以上にあたし主体で心まで官能的に感じさせて、何度も急激に上り詰めては、振り出しに戻されて。
果てた直後はとても気恥ずかしいのに、彼はキスをしてくる。
よくやったねと言わんばかりのキスをして、さらなる刺激を与えてくる。
貪欲に求めてくれるのが嬉しかった。
どんな恥ずかしい姿も、彼には見せられた。
触れていたい。
繋がっていたい。
彼への想いを封じるのは長きに渡って苦しんでいたというのに、想いを解放した途端、九年の想いは簡単に、奔流のように流れ出る。
心まで彼に抱かれたいと、彼をぎゅっと抱きしめながら啼いた――。