この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
――でも、その頃……組織は俺と棗が既に潰してるんだ。それでも黒服と飼われている女がいるのはおかしいな。
潰すの意味を聞いてみた。
それはそれは聞いているだけで、アクション映画が目の前で繰り広げられているような大活劇。
ひとことで言えば、少年ふたりが施設を爆破させたらしい。
なんとそれは、私も昔聞いたことがある東京のガス爆発事故と処理されたものとか。
――男も女も捕まっていたのは逃がした。まあイメージとしては、脱獄させたんだな。どこに行き着いたのかは知らねぇけど。
彼らを虐げた大人はどうしたのか……、彼は言おうとしなかったから、あえて聞かなかった。
――潰してから一年後には、もう組織は復活したことになる。復活出来るだけの中枢が残っていたことに。
彼の顔は強張っていた。
――まあ、どうであれ、お前は記憶が途切れてねぇとしているのに、少なくとも天使に関するところに、今常識的に考えて齟齬はあるのは確かだ。
たとえば――。
あたしが事件性を訴えた、派出所のお巡りさん。
彼が電話をして呼び出した、それより上司のような男。
あたしが、頭だけの屍体を天使だと思えた根拠もない。
だけどあたしは、天使は死んでいるのだと認識はしたのは確か。
エリュシオンを唄う天使――。
須王が作った九番目の曲を歌った彼女は、第九を歌った。
それはただの偶然か、エリュシオンを示したかっただけなのか。
――エリュシオンには十の掟があり、該当する音楽がある。その音楽が組織の絶対的な命令だ。