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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
「育成課とライセンス課は課長がいないのか。では育成課はイベント課と共に、ライセンス課は音響課と統合する。そして、HADESプロジェクトは打ち切り。補填出来るものを企画が考えるんだ」
その時須王が言った。
「悪いですが、俺に育成課の上原チーフと、受付の三芳を下さい」
「なぜだ?」
「俺が信用出来るのはふたりなので。そしてHADESに成り代わるプロジェクトは三人を中心に進めさせて下さい。社長に直接ご報告して指示を仰ぎます」
「ということだが、お前達はどうだ。参加して大きな企画で絶対立て直そうと思う気概のある奴はいないか?」
須王は企画を盗られた側にいる。
その須王が頭を切り替えて、信用出来る人物を指定することに、そして彼が代案を打ち出すことに、それ以上のものが考えられない社員達は黙り、異論は出なかった。
「わかった。変則的に早瀬くんにその企画の全権を委ねる。必ず、オリンピアに打ち勝つように。通常業務は他に引き継ぎを。特に上原チーフ。きみ以外に育成課はいない、フォローはしっかり頼むぞ」
「はい、わかりました」
これで社長公認の別プロジェクトが起動したことになる。
彼もあたしも女帝も、堂々とプロジェクトに専念できるようになったのだ。 ……責任重大だ。
「それと、新企画に他の音楽家を混ぜたいと思っています」
「……誰だ?」
「長谷耀」
途端にあたしから、しゃっくりのようなおかしな声が出てしまった。