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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
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結局あたし達が遥くんの病院でわかったことは――。
理事長である忍月栄一郎が坪内医師に頼んだ患者は、すべてあの特別室に入れられて、亡くなっていること。
そして忍月栄一郎が委託した外部医療チームについて、あの病棟の看護師さん達は、AOPによって記憶が改竄されている可能性が高いこと。
あたし達が見た、遥くんから血しぶきを出させていた医師達、とりわけあたし達を追い出そうとしたあのいけすかない医師は、この病院に勤務する坪内医師ではなく、外部医療チームのスタッフの一員と思われること。
また、遥くんの居る特別室付近には、以前、外に出入り出来るエレベーターがあったこと。
追加情報としては、坪内医師は月曜日には病院に戻ってくること、そして遥くんの専属看護師は上階のVIP室にいる看護師らしい。
その記憶が正しいのかどうかは別にして、現時点、外部医療チームについて詳細がわかるのは理事長か、専属看護師ということになるが、VIP室は事前に出入り申請が必要らしく、遥くんの点滴交換まで遥くんの病室の前で待っているという手もあったが、小林さんをVIP室に入れた棗くんの力を信じ後日ということで、看護師の確認はしなかった。
そんな状況で次にあたし達が向かったのは、ある大企業だった――。
「うわ、すげっ! これがあの大手プロダクション『シンフォニア』!? やはり有名だけある、でかい建物だよな」
裕貴くんが曇天に聳える建物を見て、口を開けたまま感嘆する。
棗くんが運転席でノート型パソコンでなにやらお仕事(メールの返信?)を始めた間、棗くんが乗っている車は路上に置いて、あたし達だけが車の至近距離からビルを見上げていた。