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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
「やっぱりエリュシオンより大きいよね」
OSHIZUKIビルも現代的デザインで存在感があるし、十分高層ビルだとは思うが、初めて見るシンフォニアの持ちビルは、横にも縦にもOSHIZUKIビルより一回りは大きい気がする。
日本の歌謡界のみならず、古くから芸能界にも名だたる俳優を輩出しているこのプロダクションは、日本最大手と言っても過言ではない。
本来ならヒットメーカーである須王だって、このシンフォニアと契約して歌を提供したりすれば、もっと知名度があがるのに、彼はエリュシオンにこだわっている。
否、既に早瀬須王自体がブランドだというべきか――。
「だけどHARUKAってインディーズでしょう? シンフォニアでデビューしていないのに、遥くん情報あるの?」
須王は口端を吊り上げるようにして言う。
「ネットからだろうが、HARUKAがそれだけ有名になっていて、なにも手を打っていないということはないだろうさ。手を打つなら、それなりの下調べをしているはずだ」
確かに、巷で人気インディーズ歌手を、大手プロダクションが調べていないわけはないかもしれない。
だが――。
「アポなしにここに突然来て大丈夫なの? 須王、コネかなにかあるの?」
「知り合いはいねぇこともねぇが、〝商品〟の内部調査まで教えてくれる奴はいねぇな。仕方がねぇからとりあえず長谷耀呼ぶわ」
「え、長谷さんって、シンフォニアだったの!?」
「ああ」
うっわー。長谷さんって、シンフォニアに所属していながら、〝天の奏音〟のあのおかしな曲を、イメージソングなどと称して作っちゃうんだ。
「え、だったら〝天の奏音〟とシンフォニアは関連があるの?」
無関係だったら、仕事の依頼などしてこないだろう。
教祖が長谷耀が好きで依頼してくるのなら、話は別だが。