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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
ひとりにやにやと笑い、挙げ句の果てに両手で顔を覆うようにして、きゃーきゃーと悶えていると、しーんと静まりかえってしまい、周囲から白い目で見られていた。
「随分と、より具体的な想像が出来るようになったのね、上原サン。よかったわね、須王。庶民的な未来があるようで」
「うわー、須王さん顔赤いぞ?」
「がははははは」
「裕貴、チャーハンのおかわりだよ」
ほのぼのしていて、まるで大家族。
あたしにどんな未来が待ち受けていても、皆と須王がいてくれればそれでいいと思う。
あたしは生まれた時に作られた〝家族〟より、自分で選んだ〝家族〟が居ればそれでいい。
本気でそう思うんだ――。
すべてを片付け終えたら、須王はいなかった。
「須王さん、柚とブルームーン見る気満々で、支度があると部屋に行ったきりだから、きっと柚を待っているんだよ。早く行って上げな? 俺達はスタジオで、須王さんが出した宿題を消化しないといけないし。滅茶苦茶難しいことを、つらっとさらっと注文して行っちまうんだぜ?」
裕貴くんが若干涙目だ。
「ほらほら、裕貴。私が監督を任せられたんだから。お喋りしない!」
なぜか楽器を弾けない女帝が、監督らしい。
「ふふふ、小林サン。まだドラム叩こうとするのなら、その傷、広げてあげようかしら?」
ベースを肩からかけた棗くんが、その美しい手で拳を作り、ぎゅぅんと音がでそうなほどに高速回転して小林さんに向かうものだから、小林さんは慌ててそれを避けた。
「あら、野性の勘?」
……おお怖。
須王が〝合宿〟と言っていた通り、須王がいなくてもスパルタ練習だ。
あたしはごめんなさいと心に両手を合わせながら、須王の部屋に向かう。