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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「いや、それは……須王ファンが……」
「いらねぇよ、んなもん。お前ひとりいればいい」
須王は笑ってあたしの手をとると、あたしの手の甲に口づけながら、挑発的にあたしを見た。
「音楽を語るお前が可愛くて、たまらねぇんだけど」
「な……っ」
「溺愛を超えてる」
あたしの手の指に、自分の指を絡ませる。
それがなにかエロチックで、ドキドキしてしまう。
お酒を飲んでもいないのに、まるで酔ったような気分だ。
「アホ、そんな顔するなよ。ここからかっ攫って、ラブホ行くぞ?」
冗談にも思えないようなことを言いながらも、耳に囁く声は甘くて。
まるで耳を愛撫されているような気分になって。
「ぁ、ん……」
ぶるりとしながら喘いでしまう。
するとそれを見逃す須王ではなく、くちゃりと音をたててあたしの耳を食む。
「ゃ……」
「柚、声聞かれるぞ?」
耳殻に舌を這わせられ、耳朶を甘噛みさせる。
「は……んっ」
肩に回っていた須王の指が、あたしの唇の間に差し込まれ、あたしの舌と戯れる。
そのおかげで声はくぐもったが、耳の穴に舌をぬるりと忍ばせられ、体がふるふると震えてしまう。
またジャズの曲が変わり、こんどはムードたっぷりなジャズナンバーとなり、あたしをさらに昂ぶらせていく。
ああ、音楽に包まれ、好きな男に愛されて、こんなに幸せなことはない。
ピアノの鍵盤のひとつひとつから生まれる音が、あたしの心臓となって場に息づき、あたしはちゃんと生きているんだ――そう思えた。
「お待たせしました」
……ウェイターが現れるまでは。
「あいつ、さっきからちらちらお前のことを見ていて。これで諦めただろう、お前の男は俺だって。誰が渡すかってんだ」
「~~っ!!」
見られていた、見られていた!
もぐもぐ、穴に潜っていいですか?

