この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice

「柚!?」
「大丈夫、だから」
火のような鋭い痛みに耐えて笑い続けていると、棗くんの目に変化が生まれた。
そして。
「ああああああああああああ!!」
棗くんは須王の首から口を離すと、仰け反るようにして慟哭した。
すべての感情を超越したようなその声は、絶望にも似て。
そんな孤独に陥る棗くんを、須王はぎゅっと抱きしめた。
それは、ただの友情を超えた姿だ。
あまりに美しく、あまりに切なく。
あまりに痛烈で、あまりに儚い。
棗くんの痛みを理解出来るのは、須王しかいないのだろう。
あたしも理解出来るかもしれないと思ったのは、なんとおこがましいことだったのか。
須王の横にはいつも棗くんがいた。
そのポジションに立つあたしは、棗くんにとっては「奪うもの」だ。
棗くんの凄惨な悪夢は、終わらない。
あたしは、棗くんに敵意を向けられたのだろう。
それはきっと、日常的に積み重ねていた、棗くんの真情だ。
あたしはどうすればいい?
棗くんから須王を奪わずにすむ方法は――。

