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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定
―――――――
「入選だってね」
「ええ、小さなコンクールでしたが・・」
あれは幾つだったか‥
12才?13才?
まだ早乙女本宅で、父と一緒に生活していた頃‥
3階に居を構える祖父と、2階に居を構える私と父、生活圏は完全に分かれていた。
好きだった絵画を、偽名でコンクールに出した‥
入選はしたが偽名なだけに、大きくは語られず。
コンクール運営には話は通したのだが、最終的に入選作品‥ただそれだけになった。
「小さくても目に止まるのは良い事だよ」
「入選‥だけですが‥‥」
「それでも・・
人を惹きつける何かがあったという事、紀永は画家になりたいのかい?」
「・・・
出来れば・・
好きな風景を書いて、生きていけたらとは思いますね」
「画家ね‥
そういう人生も良いのかも知れない‥‥何事も自由が一番だよ」
「私もそうは思いますが‥‥」
「早乙女かい?
確かに少々厄介だね、なかなか抜け出せるものでは無い」
「ええ‥
それは分かってます」
絵は、あくまでも趣味‥
この頃の私は、父や師に付き徹底的にコンピューター学を習っていた‥否応無しに・・
「プログラマーの才能があるから、会長がなかなか離さないだろう‥
それくらいは予想は付くが‥‥紀永がどうしても画家の道に進みたいと言うのなら、私は止めない」
「・・父さん・・・」
「好きな事をするのが一番伸びる‥
私はそう思うからね」
「考えては‥‥見ます‥」
本当に、リビングでの何気ない会話‥
今になって、父がかなり本気だったとは、この頃は全く思っていなかった・・・
――――――――
「・・・・・」
少し眠っていたのか‥
父が眠った後、私はまた宿泊施設へ戻り、続きをやろうと思ったが‥‥眠ってしまったらしい。
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