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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定
何かと言えばやって来て、私を構って遊ぶ‥
嫌ではなかったのだが、流石に連日来られて逃げ出した事も・・・
懐かしい話・・
私ですら忘れていた本宅時代・・・
「・・・そう言えば・・・まだ絵は描いているのかい?」
「全く‥
そんな暇もありませんから」
「そうか・・・
紀永が描く風景画が、私は好きだったのだがね・・・まだ本宅に数枚残っているよ・・・」
「残っていたんですか?」
本宅を出る時に、全て処分した筈だったのに?
「・・・多分処分するのではないか・・・そう思って、先に何枚か抜いて置いた・・・・気付かれなかったみたいだね・・・」
「全く・・
しっかりしてますね父さんは、本当に私の性格を見抜いてる」
「・・・絵を・・・描くのを、止めて欲しくなくてね・・・つい隠したのだよ・・・何時かは思い出になるのでは・・・また描いてくれるのではないか・・・そう思った」
「・・・
描ければ‥‥良いですが‥
もう、描き方すら忘れてしまった」
「・・・だから残した・・・思い出して欲しくて・・・・夢だっただろう・・・紀永の・・・」
「夢・・・」
そんな夢を抱いた事もあった‥
画家として生きて行きたいと‥‥遥か昔に捨てた夢・・
「・・・本当に暇が出来たら・・・少しだけでも良い・・・描いて欲しい・・・・私からの願いかな?」
「努力はしてみます」
「・・・そう・・」
「少し話過ぎですよ父さん‥‥」
「・・そうだね・・・だが、こうして紀永と話せるのが楽しくてね・・・つい・・・
少し眠ろうか・・・」
「そうして下さい」
うつらうつらと眠る父を見ながら、少しだけ過去を振り返る‥
まだ夢を持っていた頃の・・・
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