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青い残り火
第9章 第9章
千紗の言葉に片手を上げて応え、重い足取りでゆらゆらと前に進んだ。

所詮教師と生徒だった。

なぜ辞書なんかに惹かれるんだ
何を期待してたんだ
どうなりたかったんだよ……

自分に問い掛け「これじゃただのガキじゃねぇか」と吐き捨てる。

大学卒業して教師になったら
俺だって五六年経てばあの人の瞳に映る筈だ
頼むからそれまで……

真琴と理恵子の二人、それ以外の女達にも、身体以外のものを求めた事はなかった。気楽に付き合い、未来を想像した事などなく、面倒に巻き込まれるのは御免だった。
一人寝のベッドの中でも、睦み合う対象はいつも違っていた。だが、夜毎みなぎってくる若い欲望はいつしか西崎澪だけがその相手となり、見たことも触れたこともない彼女の身体を夢想しては自慰に耽った。
手に入れたいものは更に遠くなった。本当に欲しいものは心だった。

ロッカールームでトレーニングウェアに着替えた一馬は、シューズの紐を硬く結んだ。

「おぅ、水撒き済んだか?」

肩に描けたタオルで汗を拭きながら、渋谷が入ってきた。









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