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青い残り火
第9章 第9章
レバーを数回引いても水は出ない。
「部活は?」
一馬は、そこにいる芽衣にようやく気付いた。顔を手で拭き、額に貼り付いた髪を上げた彼は、おどけた笑顔も、取り繕う言葉も持っていなかった。
芽衣は困惑の中に、かろうじて薄笑いを混ぜ込んでいる。
「中尾に水撒き頼まれた」
伸ばしたホースをリールに巻き取りながら、彼が無愛想に答えた。
「芽衣ーっ、遅くなってごめん、図書室の鍵がなぜか学園長室にあってさ、探すの大変……、あれ?」
A棟から駆けてきた千紗が息をきらせて芽衣の横で立ち止まった。
「藤村なにやってんの、ずぶ濡れじゃん、 あはは、暑くて水浴び?」
「まあね」
「今度芽衣とスポーツドリンク差し入れに行くから、後輩の指導がんばってね」
一馬は無言のままホースを巻き終え、放り出していたバッグを掴むと「じゃあな」と体育館の方に歩き出した。
「渋谷によろしく言っといてー」
「部活は?」
一馬は、そこにいる芽衣にようやく気付いた。顔を手で拭き、額に貼り付いた髪を上げた彼は、おどけた笑顔も、取り繕う言葉も持っていなかった。
芽衣は困惑の中に、かろうじて薄笑いを混ぜ込んでいる。
「中尾に水撒き頼まれた」
伸ばしたホースをリールに巻き取りながら、彼が無愛想に答えた。
「芽衣ーっ、遅くなってごめん、図書室の鍵がなぜか学園長室にあってさ、探すの大変……、あれ?」
A棟から駆けてきた千紗が息をきらせて芽衣の横で立ち止まった。
「藤村なにやってんの、ずぶ濡れじゃん、 あはは、暑くて水浴び?」
「まあね」
「今度芽衣とスポーツドリンク差し入れに行くから、後輩の指導がんばってね」
一馬は無言のままホースを巻き終え、放り出していたバッグを掴むと「じゃあな」と体育館の方に歩き出した。
「渋谷によろしく言っといてー」