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青い残り火
第1章 第1章
春のそよ風が枝葉を揺らし、道をゆく者たちの肩に、光のさざめきを映し出す。車道の両側を縁取るけやき並木は、夏には深い緑で日陰をつくり、秋には赤や黄色に色付いて葉を落とした。
「冬は逆さにした竹ぼうきみたいだったのに、見て、新緑がきれい」
空へとのびる高い枝を見上げた芽衣は、朝の空気を思いきり吸い込んだ。
「ねぇ聞いてる?」
「うん」
「もう……、携帯弄るのやめてよぉ」
顔を上げようとしない彼に芽衣の頬がぷくっと膨らんだ。
「店長に、出ますって返信しといた」
「まさか今日バイト入れたの?」
リュックを右の肩に掛け、一馬は携帯をズボンのポケットに戻した。
「熱出したヤツがいるらしいんだ、人手不足だからなぁ、しょうがないよ」
「放課後パフェ食べに行く約束は?」
「あ、また今度な、ははっ」
クラス替え以降、一馬との距離が遠くなったと感じていた芽衣は、彼の腕をぎゅっと掴むと「次は許さないからね」と拗ねてみせた。
「朝からラブラブね」
肩を叩かれて振り向くと、にやけた顔の千紗と桃香が「おはよう」と二人の横に並んだ。
「冬は逆さにした竹ぼうきみたいだったのに、見て、新緑がきれい」
空へとのびる高い枝を見上げた芽衣は、朝の空気を思いきり吸い込んだ。
「ねぇ聞いてる?」
「うん」
「もう……、携帯弄るのやめてよぉ」
顔を上げようとしない彼に芽衣の頬がぷくっと膨らんだ。
「店長に、出ますって返信しといた」
「まさか今日バイト入れたの?」
リュックを右の肩に掛け、一馬は携帯をズボンのポケットに戻した。
「熱出したヤツがいるらしいんだ、人手不足だからなぁ、しょうがないよ」
「放課後パフェ食べに行く約束は?」
「あ、また今度な、ははっ」
クラス替え以降、一馬との距離が遠くなったと感じていた芽衣は、彼の腕をぎゅっと掴むと「次は許さないからね」と拗ねてみせた。
「朝からラブラブね」
肩を叩かれて振り向くと、にやけた顔の千紗と桃香が「おはよう」と二人の横に並んだ。