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青い残り火
第13章 第13章
哀しい喜びを湛えたあの時の表情は、夜毎一馬の心と身体を支配し、彼は今も夢と現実とを行き来していた。
奪いたい
俺ならきっと幸せにできる
いや、汚れてる
先生は汚れてる
誰より深く愛し合っている二人がなぜ兄と妹なのか。なぜ誰にも祝福されない関係を、おぞましいとも言える道を選んだのか。その理解し難い事情を知ってからも尚、彼は西崎への想いを消せなかった、と同時に三島への強烈な嫌悪感を抱き続けていた。
「では」と会釈して通り過ぎようとする西崎を一馬が邪魔した。
「あの……、夏休みの前に、先生が出した課題。あの詩、俺、先生に向けて書いたんです。俺、……先生が好きです」
眼鏡の奥の瞳は冷静で、予期していたかのように微動だにしない。
「多感な頃の、素直な感情を思い出したくて、個人的な気持ちからあの課題を出しました」
「……え?」
「藤村さんの作品は、その頃の自分を見つけた気がしました」
奪いたい
俺ならきっと幸せにできる
いや、汚れてる
先生は汚れてる
誰より深く愛し合っている二人がなぜ兄と妹なのか。なぜ誰にも祝福されない関係を、おぞましいとも言える道を選んだのか。その理解し難い事情を知ってからも尚、彼は西崎への想いを消せなかった、と同時に三島への強烈な嫌悪感を抱き続けていた。
「では」と会釈して通り過ぎようとする西崎を一馬が邪魔した。
「あの……、夏休みの前に、先生が出した課題。あの詩、俺、先生に向けて書いたんです。俺、……先生が好きです」
眼鏡の奥の瞳は冷静で、予期していたかのように微動だにしない。
「多感な頃の、素直な感情を思い出したくて、個人的な気持ちからあの課題を出しました」
「……え?」
「藤村さんの作品は、その頃の自分を見つけた気がしました」