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青い残り火
第13章 第13章
彼は隣にいる教師に何か話し掛けた後、立ち上がってドアの方に向かってきた。
「あ、あの、どうも」
廊下に出てきた男にわざわざ声を掛けたのは、男の手元が気になったからだった。
「初めまして。明日からこの学園で国語総合を担当する中谷です」
悠長に挨拶を交わしている場合ではなかった。
「あの、中谷先生、それ……」
「あ、これ。前の先生の忘れ物。処分してもいいらしいんだけど一応事務室に持っていく方がいいと思って……」
それは紛れもなく、西崎の国語辞典だった。
「あ、それ俺がやっときます。前にも他の先生に頼まれて古い地図を持っていったことあるし」
「そりゃ助かる。ありがとう、頼むよ」
一馬を見上げて嬉しそうに笑う彼はまだ若く、教員免許取り立ての臨時教員だろうと予想がついた。
廊下を歩く一馬の手に、小豆色の古ぼけた辞典が握られている。その表紙の文字は薄れ、ページはゆるく波打っていた。
「あ、あの、どうも」
廊下に出てきた男にわざわざ声を掛けたのは、男の手元が気になったからだった。
「初めまして。明日からこの学園で国語総合を担当する中谷です」
悠長に挨拶を交わしている場合ではなかった。
「あの、中谷先生、それ……」
「あ、これ。前の先生の忘れ物。処分してもいいらしいんだけど一応事務室に持っていく方がいいと思って……」
それは紛れもなく、西崎の国語辞典だった。
「あ、それ俺がやっときます。前にも他の先生に頼まれて古い地図を持っていったことあるし」
「そりゃ助かる。ありがとう、頼むよ」
一馬を見上げて嬉しそうに笑う彼はまだ若く、教員免許取り立ての臨時教員だろうと予想がついた。
廊下を歩く一馬の手に、小豆色の古ぼけた辞典が握られている。その表紙の文字は薄れ、ページはゆるく波打っていた。