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青い残り火
第13章 第13章
「いいのこれは」

触れることさえ許されなかった西崎澪の宝物が、なぜ放置されたままなのか。

忘れたりする筈がない
必要なくなった?

水に濡れたページを必死に乾かしていた彼女の姿と、恋に落ちた瞬間の戸惑いが蘇ってくる。
一馬は階段の下り口で立ち止まり、壁にもたれて人気が途絶えるのを待った。

表紙をめくると、辞典の使い方や略語、記号を説明しているページが現れ、自分が持っている物と比べても遜色がない。
あ行に入り、亜、阿、啞と文字を確認し、ざっと目を通した一馬は薄いページを一枚めくった。

「ん?」

見開きになったページの中心部、一番下の段に赤い色を見つけた。窓に近づき、波打つ紙を指で押さえ、中心部分がよく見えるように光に晒すと、その赤は色鉛筆だった。

あい・する【愛する】

赤い色はその文字を囲んでいた。

愛する?
愛するって

一馬は続く言葉があるのではないかと、それは三島の名ではないかと直感した。

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