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青い残り火
第14章 最終章
「気にしなくていいよ。それよりその荷物持つよ」
「ありがと」
母親と二人で歩くのは、小学生の時以来だった。
去年揃って定年退職した両親を旅に誘うと、歴史の中でも特に戦国時代が好きな総子は迷わず彦根城を選んだ。
「関ヶ原も行ったし、小谷城も姉川も、安土城も行ったけど、まさか、一馬が念願の彦根城に連れて来てくれるなんてねぇ」
レトロな雰囲気の店内は、ステンドグラスの吊下げ灯が並び、耳に優しいギターの音色は、外の雑踏を忘れさせてくれる。
窓際に通された二人は揃ってアメリカンコーヒーを頼んだ。
「それにしても、あの城の階段よく登ったね」
「ふふっ、足は強いのよ。毎日毎日学校の階段で鍛えられてきたもの」
「あー、わかるそれ」
「でしょ? 職員室と教室を一日何往復したことか」
「あははっ、俺はまだまだ大丈夫だけどね」
「そりゃあなたはまだ若いもの」
一馬は、ベテランの女教師が階段で若手に追い抜かれていくのを、母と重ねて見ることがある。その母も、今は学童保育の指導員として子供達と関わり続けていた。
「ありがと」
母親と二人で歩くのは、小学生の時以来だった。
去年揃って定年退職した両親を旅に誘うと、歴史の中でも特に戦国時代が好きな総子は迷わず彦根城を選んだ。
「関ヶ原も行ったし、小谷城も姉川も、安土城も行ったけど、まさか、一馬が念願の彦根城に連れて来てくれるなんてねぇ」
レトロな雰囲気の店内は、ステンドグラスの吊下げ灯が並び、耳に優しいギターの音色は、外の雑踏を忘れさせてくれる。
窓際に通された二人は揃ってアメリカンコーヒーを頼んだ。
「それにしても、あの城の階段よく登ったね」
「ふふっ、足は強いのよ。毎日毎日学校の階段で鍛えられてきたもの」
「あー、わかるそれ」
「でしょ? 職員室と教室を一日何往復したことか」
「あははっ、俺はまだまだ大丈夫だけどね」
「そりゃあなたはまだ若いもの」
一馬は、ベテランの女教師が階段で若手に追い抜かれていくのを、母と重ねて見ることがある。その母も、今は学童保育の指導員として子供達と関わり続けていた。