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青い残り火
第14章 最終章
「次の学校への転任手続きとか引き継ぎは?」

「とっくに済ませたよ、問題なし。むこうに挨拶もしてきたし」

「懐かしかったでしょ」

「まあね」

運ばれてきたコーヒーの薫りを味わいひと口飲んだ。二人は「おいしいね」と頷き合い、窓の向こうを歩く観光客を何とはなしに眺めていた。

「ところで、鈴木君元気?」

会ったこともない息子の友人の近況を、総子はいつも親しげに訊ねる。

「ああ、来月子供が生まれるって」

「ええっ、そうなの?」

「言ってなかったっけ?」

「知らないわよ。結婚してどれぐらい経つの?……桃香さんだっけ」

「そ、三年だよ。やっと子宝に恵まれたって喜んでるよ」

「良かったわねぇ。……あの子は? ほら、随分前に会った彼、ほらバスケ部のキャプテンだった……」

「あぁ、渋谷ね。あいつはまだ独身」

「あれ? 同級生とお付き合いしてなかった?」

一馬は「それいつの事だよ」と言ってカップを口に運んだ。


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