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青い残り火
第5章 第5章
その後二人は無言で駅まで歩き、それぞれのホームに分かれて階段を下りた。
線路を隔てて向かい合うと間も無く電車が到着し、走り去った後に理恵子の姿はなかった。

男と女なんてこんなもんだろ、と一馬は思った。楽しんで、後腐れなく終わる。それでいいじゃないかと。

一人になって気が抜けた彼はベンチに腰掛けた。ふと雨がやんでいることに気付き、やけに長かった今日の一日を思った。

男と女の修羅場、バイト先での真琴と理恵子、それと美弥の嫉妬。

一馬は時間を戻していった。

学校、中庭、渋谷のバカ、辞書、濡れた国語辞典。
西崎澪の顔が浮かんだ。

辞書、教室、国語の授業。

『初恋』を板書する教師の背中が見えた。振り向いた彼女は眼鏡を掛けていない。

人こひ初めしはじめなり

……どうした俺、さっきの修羅場のせいで頭がおかしくなったのか?

中庭での西崎を思い出した一馬は、はっとした。

俺を拒んだ
あの時、完全に俺を拒否した


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