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青い残り火
第6章 第6章
緊張して動けない千紗にもう一度「ありがとう!」と言った渋谷は急に振り返り、「なんだお前らは!」と叫んだ。

さっと開いた花道を確認した彼は、「遅刻するぞ!」の一言を残し、校舎に向かって一目散に駆けだした。

「なんだありゃ」

「行った……」

「行ったな」

丸い壁はばらばらと崩れ、小さな群れをいくつも作って教室を目指す。
興奮覚めやらぬ女子達はキャーキャーと騒ぎ、千紗を振り返りながら目指した。

残された三人はそれぞれに動揺し、その中で桃香は涙を滲ませていた。

「渋谷ったら……」

「どうしょう、私、うんて言っちゃった」

「い、言うしかないでしょ、私も惚れるわ」

「ねぇ、何で桃香が泣いてんのよ」

「えへへ、渋谷はいいやつだよ千紗、おめでとう」

そんな桃香に千紗も鼻をすすった。

「うん」

「ねぇ行くよ、遅刻する」

芽衣が先に立ち、そのあとを二人が追いかけた。

馬鹿みたい
あんな大勢の前で
恥ずかしくないの?

芽衣は丸めたメモ帳を握りしめていた。
「好きです」と、一馬に言われた記憶がない。はっきりと、その心の内を耳で聞いた事がなかった。

べつにかまわない
ちゃんと愛し合ってるもの
言葉より深く、ちゃんと愛し合ってるもの







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