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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 「……わかりました……助けます。絶対に──私が日嗣様を助ける。そして二人で、絶対に淡島に帰ります……!」
だから神依は一息にそれを言い放つと一度大きく涙を拭い、背嚢ごと一気に外套を脱ぎ捨てた。
 それにわずかに世界が共鳴する。木々が踊り、梢が笑う。先ほど布を飛ばした風が、ざあっと大きな翼となって、今度は神依の中を駆け抜ける。
 生命の息吹を孕む、花起こしの風。
 その風に外套の中で窮屈に押し込められていた裳がふわりとふくれ、稲穂の襷が浮き上がる。それはどこか懐かしい、別段おしとやかでも何でもない神依らしい感覚だった。跳び石を渡る時、木を跨ぐ時は、いつも海や空から来る風が足元をくすぐっていた。
 (今の私を形作るのは、この神楽鈴と稲穂の襷。禊と童から贈られた玉と、お母さんから受け継いだ羽衣だけ。これがすべて。でも……でも、これでいいんだ。私は巫女──淡島の巫女だから──)
 一度は黄と黒の蛇に阻まれた神依の進むべきその道は、今は煌々と神が興した炎に照らされている。だから堂々と石の台(うてな)のその淵まで歩み出れば、首から提げた玉の緒の、石と鈴とがわずかに擦れて音を出し、神依に何かを訴えてきた。
(……え?)
そしてその些細な変化こそ、神と人とが交わる場所。一粒の水晶が道を分けたように、神依はその細やかな声を聞き分けた。
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