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好きになった人
第4章 冬
茉莉は、動けずにいた

トイレの水の音に紛れて、甘い声が聞こえる

お父さんのこんなに優しい話声は、聞いたことがない

詩織の蕩けそうな甘い声が聞こえる

二人は愛しあっている。。。

少なくても、お父さんは詩織を愛しているだろう。。。

お母さんに見せる顔と違う。。。

悲しいはずなのに、聞かずにはいられない。。。

詩織の蕩けそうな甘い声が聞こえて、体が反応してしまう。。。

1回だけ。。。聞こえた言葉が、ぐるぐる回る

この二人は、どうして抱きあうんだろう?

お互いに求めているのに。。。

何年も、そうしてきたのに。。。

どうして、結婚しなかったんだろう?

抱きあった二人は、別々に歩いていく

何もなかったように、チームに戻るお父さん

詩織は、車に戻る

誰に電話しているんだろう?

あんなに、甘い声を出していたくせに、泣きそうな顔してるのが、見える

車から降りてきて、陸を見ている

近づいていくと、泣いているようだ


詩織さん?

振り返った詩織は泣いていた


驚いた顔をすると、笑いかけてくる


詩織が、わからない。。。


話がしたいんです


勝手に口が話していく

グラウンドを見ると、陸とお父さんが見える

笑い合う二人は、似ている

似ているはずのない二人。。。

詩織について行くと、車の後部座席を勧められる

車に乗り、隣の詩織を見ると、私を見る

私は、どうしたいのか、わからなくなる

見つめる私に、笑いかけてくる


見ちゃった?


え?


トイレの裏にいた?


ハイ。。。

ごめんなさい


謝らなくていいよ。。。

謝るのは、私の方かな?


無邪気に、いたずらを見つかった子供のように話していく詩織を見つめてしまう


詩織さん?

お父さんが好きなんですか?


好きよ。。。

でも、愛してない

きっと、直樹は私を好きでもないわ。。。


え?

あんなに、優しく笑いかけているお父さんは、初めて見ました。。。


茉莉ちゃん、直樹は、いつもあんな感じよ。。。

何度も、騙された

ふふっ


騙されたという割には、嬉しそうに笑う詩織を、不思議に見つめてしまう


どうして、二人は別れたんですか?


ずっと、気になっていた言葉をぶつけていく


昔、彼女がいた直樹から取っちゃったの。。。











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