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月光の誘惑《番外編》
第1章 月下の桜(一)

「わ、翔吾くん、入力するの速い! 『寒いのは苦手?』 うん、苦手。ダウンジャケットが手放せないの」
「へぇ」
「えーと、『彼氏はいるの?』 いないよ。作る気もないよ」
「え、なんで?」
せっかくいい回答が得られたと思ったのに、何それ? 納得できないんだけど。
「私、結婚する気はないの。だから、特定の人はいらないんだ」
メッセージを入力しながら、あかりさんは操作難しいねと笑う。
結婚しないから恋人はいらない? 何だ、それ。結婚は考えなくても、恋人くらい作ればいいじゃん。遊びでもいいじゃん。
なんで、最初からゴールを決めてるの?
と、考えて、元カノのことが頭をよぎる。
……由加も、同じ気持ちだったのか?
なんで、最初からゴール――結婚しないことを決めているのか、と。
なんで俺は、追われるのも、追うのも、うまくいかないのか。
「結婚しない男なら、いいの?」
「うん。あと、付き合ってほしいって言う男の人もダメかな。なかなかいないんだよね、そういう人」
「……それって」
あかりさん、それは。
恋人はいらない、結婚相手もいらない。でも、そういう男はいてもいい。
友達として。
連絡先を登録するときに見えた、いくつかあった男の名前。その名前の前に、【セ】とついていた。それは、もしかして。

