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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)

 ワインレッドのニットワンピースは、やっぱりあかりにはよく似合った。サイズもピッタリ。
 しかし、あかりはもじもじと恥ずかしそうに足を擦り合わせている。仕方がない。ショーツが乾いていなかったんだから。

「ノーパンで家まで帰るの、嫌だなぁ」
「タクシーで送っていくよ」
「ほんと? ありがとう!」
「風邪引いちゃうでしょ」

 電車で帰って痴漢に遭ったらどうするんだ、と考えなかったわけじゃない。あわよくば、このまま冬休みをあかりのアパートで過ごせないか、と考えなかったわけじゃない。

 俺の頭の中は、既に桜が満開だ。

 上階のラウンジで会計はすませてある。エレベーターの中であかりの腰を抱きながら、今日からの予定を考える。

 あかりが下着をはいたら、今日はどこに行こう? あかりは寒いところが苦手だから、暖かいところがいいなぁ。海外に行くのはどうだろう。あかりはパスポート、持っているかな。

 年末年始は、音楽番組を見ながらゆっくりセックスをするのもいいし、初詣に出かけて甘酒を飲んだあとにセックスでもいいかもしれない。

「翔吾くん、ニヤけすぎ」
「え、そう?」
「やらしいこと考えていたんでしょ」
「当たり前じゃん」

 そう、当たり前だ。
 俺はハタチで、隣にはノーパンの、俺の惚れた女。欲情するなというほうが無理だ。

「早くあかりを抱きたい」
「昨日からかなり抱かれていますけど? 朝も何回したんでしたっけ?」
「足りないよ」

 足りるわけがない。
 あかりの不満そうな顔。俺も不満そうな顔をして、彼女の額にキスを落とす。密室のエレベーター内でこれ以上手を出すと、俺が我慢できなくなる。

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