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月光の誘惑《番外編》
第3章 月に臨み、月を望む。

 どんな手段を使っても落ちない男、湯川望。
 それがいつの間にか俺の二つ名になっていた。
 捨て身のアタックを仕掛けてきた看護師が、相手にされなかった腹いせに言い触らしたのだろう。

 看護師たちの間では、水森との関係を噂されたこともある。女に興味がないことが、そのまま男に興味がある、と解釈されてしまうのはあまりにも短絡的だと思ったが、訂正するのも面倒なので放っておいた。

 そうしたら、看護師の間で耽美的な妄想が広がったとか、そうでないとか。そのあたりの事情は詳しくない。
 とりあえず、一連の噂話によって、水森はかなり迷惑したらしいが、俺には関係ない話だった。

 絵の中の女が現実に現れてくれたら――と、何度思ったことか。何度願ったことか。
 どんな声で俺の名を呼んでくれるのか。
 どんな笑顔を俺に向けてくれるのか。
 どんな肌なのか。
 どんな指なのか。
 どんな――。

 考えるだけで勃起するのに、ついた病名は勃起不全。釈然としなかったが、治療も必要ないと断った。

 もし、何かの縁で結婚するようなことになり、妻が子どもを欲しがったら、体外受精で構わないと思っていた。精子は問題ない。勃起できないだけなのだから。
 セックスができない妻には寂しい思いをさせてしまうが、性欲を満たすための妻の浮気は認めようと思うくらいには、いろいろ諦めていた。

 そして、俺が仕事だけに没頭し、「身を固めては」と様々な人から言われ、「まだ若輩者なので」とはぐらかしていた冬の寒い日――奇跡は起きた。

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