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月光の誘惑《番外編》
第3章 月に臨み、月を望む。

あかりの連絡先をさっさと登録する。月野あかり。名前、かわいいなぁ。
そのまま、よく使うホテルの予約を取ろうとして……ビジネスホテルじゃ味気ないなと思い直す。
以前学会で使われていたグレードが高めのホテルを探し、空きを確認する。幸い、ツインの空きがある。ツインか……大きめのベッドのようだから、二人で寝ても大丈夫だろうか。
二人で……二人で、か。
あぁ、ダメだ、想像するだけで勃つ。口元が緩む。
「気持ち悪いな、さっきから」
診察がなく、暇を持て余している水森の診察室。ふかふかの椅子に座り、俺は「天使が現れたんだ」と報告する。
「天使? とうとうイカれたか?」
「んふふ。水森にはわからないだろうな」
「あぁ、わからんな」
何かの書類を書きながら、こちらを見ることもなく、水森はおざなりに返事をする。
外来も回診も終わらせ、手術も委員会もない日は、たまにこうして水森の診察室でコーヒーを飲みながらゆっくりしているのだ。
水森の診察自体は午前も午後もあるが、今日は予約が入っていない。水森は迷惑そうだが、たまに、しか来ないのだからいいじゃないか。
「湯川の天使は村上ミチだけだと思っていたよ」
「そっくりな天使がいたんだ」
「……そっくりな?」
あ、ようやく食いついた。
水森がこちらを見て驚いている。珍しい顔だ。
「さっき病棟回診中に見つけたんだ。患者の見舞いで来ていた子がそっくりでさ」
「へぇ」
「連絡先を聞いて、デートに誘った」
「……湯川にしては頑張ったな」
俺の女性遍歴を知っている水森がさらに驚いている。当たり前だ。俺が童貞なのは、水森が一番よく知っている。

