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月光の誘惑《番外編》
第3章 月に臨み、月を望む。

「……え?」

 ふわり、甘い香り。柔らかく、暖かな感触。目の前に現れた、笑顔。

「せんせ、暖めて」

 抱きつかれている、と理解した瞬間には、既にあかりを抱きしめていた。離したくない、離さない、と強く。
 夢ではない。絵から抜け出たわけじゃない。あかりは暖かい。柔らかい。現実の、女だ。

 ダメだ。理性が、呆気なく崩れていく。抱きしめただけなのに、完全に勃起している。
 抱きたくて、抱きたくて、仕方がない。

「あかり」

 上を向いてくれたあかりの額にキスをする。まぶたに、頬に、鼻に。そして、微笑む唇に。
 柔らかく弾力のある唇は、何に一番似ているだろうか。さくらんぼ? マシュマロ?
 何度か触れるだけのキスをしたあと、あかりの口が薄く開いているのに気づく。
 ……挿れても、いいのか?

 恐る恐る舌を滑らせると、甘い空間が広がっていた。甘いものが苦手な俺だが、これは嫌な甘さではない。いくらでも味わっていたくなる、不思議な甘さだ。
 口内にあかりの舌を見つけ、俺の舌を絡ませる。ヌルリと熱く、いやらしく動く舌。気持ちがいい。
 溢れそうになる唾液を飲み込み、息をするのも忘れて、口内を犯す。

 もっと、欲しい。
 あかりを、もっと、知りたい。
 もっと。

「あかり、抱きたい」

 それしか言えない。
 抱きたいんだ。あかりを。

「いいよ。抱いて」

 微笑む彼女は、天使か、悪魔か。
 そんなのは、どうでもいい。どっちでも、あかりはあかりだ。

 天国にでも、地獄にでも、好きなほうに連れて行ってくれ。
 俺は――どちらにでも、ついていくから。

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