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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
オペラ・ガルニエ前のカフェ・ド・ラ・ペは夕暮れの風景とお喋りを楽しむ多くの客で溢れていた。
光とフロレアンは外のテラス席に座り、ホットワインで乾杯する。
「一杯飲んだら北駅からクルイユ行きの夜行列車に乗ろう。街灯りがとても綺麗なんだよ」
フロレアンが光の髪をかきあげてやりながら優しく囁く。
「嬉しい…夜行列車は初めてよ」
光が幸せそうに微笑む。
フロレアンは光の髪にキスしながら、じっと見つめる。
「…アガタは君に似合う服装をよくわかっているね。…すごく綺麗だ」
光は微笑む。
「…彼は昔から私のことを知っているから…。そう、12歳の時から…」
「へえ…。なんだか妬けるな。…アガタは僕の知らないヒカルを知っているのか…」
少し拗ねるフロレアンの頬を光は軽く抓る。
「あら、彼は私が口煩いナニーのポケットにカエルを入れたり、威張った執事のお茶に胡椒を入れたり…そんな事しか知らないわよ」
フロレアンは声をあげて笑う。
「酷いな。…何てお転婆さんだったんだ!」
「嫌いになった?」
「いいや、益々好きになったよ。可愛いヒカル…」
「私もよ、フロレアン。愛しているわ…」
二人は強く抱き合い、そっとくちづけを交わす。
ゆっくり唇を離し、睫毛が触れ合いそうな距離で見つめ合っていると、街角の方から声がかかった。
「フロレアン先生ではありませんか?」
二人が振り返ると、やや地味ではあるが質の良い外出着に身を包んだ初老の紳士と婦人、そしてその間にはうら若き令嬢が佇んでいた。
「マレー子爵!奥様、アンリエットさんも…!」
フロレアンは驚いて立ち上がった。
マレー子爵と呼ばれた紳士は人の良さげな笑みを浮かべ、フロレアンに手を差し出す。
「休日だというのにお声をかけてすみません。アンリエットがフロレアン先生がいらっしゃると騒ぐもので…」
「とんでもありません。子爵、私の恋人のヒカルを紹介します。ヒカル、この方が僕の雇い主でお世話になっているマレー子爵だ」
光は滑らかな所作で立ち上がり、マレー子爵に手を差し伸べ優雅にお辞儀する。
「初めまして。マレー子爵様。アサミヤヒカルです」
子爵は眼を見張る。
「おお…!何というお美しいお方だ。フロレアン先生が我々と一緒にパリにお帰りになりたがるはずですね」
横に寄り添う慎ましやかな夫人もにこやかに頷く。
光は微笑みながらふと、令嬢に視線を移した。
光とフロレアンは外のテラス席に座り、ホットワインで乾杯する。
「一杯飲んだら北駅からクルイユ行きの夜行列車に乗ろう。街灯りがとても綺麗なんだよ」
フロレアンが光の髪をかきあげてやりながら優しく囁く。
「嬉しい…夜行列車は初めてよ」
光が幸せそうに微笑む。
フロレアンは光の髪にキスしながら、じっと見つめる。
「…アガタは君に似合う服装をよくわかっているね。…すごく綺麗だ」
光は微笑む。
「…彼は昔から私のことを知っているから…。そう、12歳の時から…」
「へえ…。なんだか妬けるな。…アガタは僕の知らないヒカルを知っているのか…」
少し拗ねるフロレアンの頬を光は軽く抓る。
「あら、彼は私が口煩いナニーのポケットにカエルを入れたり、威張った執事のお茶に胡椒を入れたり…そんな事しか知らないわよ」
フロレアンは声をあげて笑う。
「酷いな。…何てお転婆さんだったんだ!」
「嫌いになった?」
「いいや、益々好きになったよ。可愛いヒカル…」
「私もよ、フロレアン。愛しているわ…」
二人は強く抱き合い、そっとくちづけを交わす。
ゆっくり唇を離し、睫毛が触れ合いそうな距離で見つめ合っていると、街角の方から声がかかった。
「フロレアン先生ではありませんか?」
二人が振り返ると、やや地味ではあるが質の良い外出着に身を包んだ初老の紳士と婦人、そしてその間にはうら若き令嬢が佇んでいた。
「マレー子爵!奥様、アンリエットさんも…!」
フロレアンは驚いて立ち上がった。
マレー子爵と呼ばれた紳士は人の良さげな笑みを浮かべ、フロレアンに手を差し出す。
「休日だというのにお声をかけてすみません。アンリエットがフロレアン先生がいらっしゃると騒ぐもので…」
「とんでもありません。子爵、私の恋人のヒカルを紹介します。ヒカル、この方が僕の雇い主でお世話になっているマレー子爵だ」
光は滑らかな所作で立ち上がり、マレー子爵に手を差し伸べ優雅にお辞儀する。
「初めまして。マレー子爵様。アサミヤヒカルです」
子爵は眼を見張る。
「おお…!何というお美しいお方だ。フロレアン先生が我々と一緒にパリにお帰りになりたがるはずですね」
横に寄り添う慎ましやかな夫人もにこやかに頷く。
光は微笑みながらふと、令嬢に視線を移した。