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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
光が渡した国際電報を縣は素早く開き、目を走らせる。
見る見る内に険しくなる縣の顔を見て、光は思わず声をかけた。
「…縣さん?」
縣は眉間に皺を寄せ、電報を握りしめると上着を羽織り足早に部屋を出た。
光は慌てて追いかける。
「どうしたの?何があったの?縣さん!」
階段を降りかけながら縣が低い声で絞り出すように答えた。
「九州の炭鉱の町で台風による土砂崩れが発生したそうだ。被害が特に酷いところが私の炭鉱で働く従業員達の村落らしい」
「ええ⁈」
光は絶句した。
縣は光に早口で告げる。
「私は日本領事館に行ってくる。情報収集と、なんとか現地と連絡が取れないか頼んでくる」
「私もいくわ!貴方一人にしておけないもの」
縣は首を振った。
「私は一人で大丈夫だ。君はここにいてくれ。
夕方、ブルゴーニュのワイナリーの主人が商談にくる。書類は私の机の引き出しにある。悪いが君が代わりに代行してくれ。今日は契約書を交わす約束なのだ」
光は頷いた。
「わかったわ。こちらのことは任せて。何も心配しないで」
縣は微かに笑った。
しかしそれはいつもの縣の余裕と自信に溢れた笑みではなかった。
「ありがとう…」
再び足早に階段を降り始めた縣に、光は叫んだ。
「縣さん!…気をつけて…落ち着いてね」
縣は一瞬振り返ると、光の眼を見て頷いた。

縣の書斎の窓から、縣の運転するメルセデスが風のように走り去り、間も無く小さくなって行くのが見えた。
光は不安な胸の内を抑えるように両手を組み、いつまでも車が消えた方向を見つめ続けていた。

そしてその夜、光はまんじりともせずに縣の帰りを待ち続けた。
…しかしとうとうこの日、縣が帰って来ることはなかった。






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