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愛憎
第1章 はじまり
フワリ…
腰に筋肉質な腕が包み込む。

(だ、誰?)

後ろを振り向くと、学ラン姿の男の子。

顔は俯いていていて、判別がつかない。


「大丈夫?」

男の子は、萌の耳元で囁く。

萌はビクンッと反射的に体が動いた。


だ、大丈夫だけど、この距離は…。


「だ、大丈夫ですけど!触らないで!」

萌は小さく囁き腰を捕まえていた手を振り払った。

実は耳も腰も弱い。
理性を保たなければ大変。

男の子はクスッと笑う。


「へぇ、ここ、キミの気持ちいい所なんだ…」

そう言って、腰の尾てい骨を触れるか触れないかの力加減でなぞり始めた。


「…んっ!!」

萌は思わず声を上げてしまう。

「やっぱり弱いんだ…。もっと気持ちよくしてあげれるよ…。」

相変わらず耳に囁く男の子。

(や、やばい…)

異常に心臓がドキドキしている。

しかし、萌は今日は入学式…!!と、自分に言い聞かせ、耳元から来るゾワリとした、なんとも言えない感覚から逃れようと、身を硬くする。

看護婦になって、死んだ父さんみたいな人達の役に立ちたい。と、夢見ていた萌は、偏差値が足りないと言う先生の反対を押し切り、父が入院していた大学病院に付属する高校を受験し、見事合格を勝ち得たばかりだった。


そんな時に、こんな事になりたくなった。

だから、電車通学なんか嫌だったんだ。

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