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愛憎
第10章 困惑
「ご、ごめんね。健ちゃん、焦げ臭いカレーで…」

「あ、いや、鍋の底しか焦げてないし、後で洗うのが大変だなぁ」

健太はほわほわと話す。

(はぁー…雪ちゃんのカレーは別に作っておいて良かったあ…)

雪香は、子ども用の座椅子に座り、スプーンを片手に

「美味しいねぇ…」

と、ふわふわ言っていた。


「ホント?雪ちゃんに美味しいって言われて、ママ作りがいあるなぁ」

ゆうは、娘のそんな姿を見ながら目を細めていた。




「で、誠がどうしたって?」


健太とゆうは同じ病棟の小児科で働いていた。

当時研修医だった健太は当然誠のことは知っている。

冒険に行く誠の良き遊び相手にもなっていたが、同時に冒険に行く誠に翻弄されていた一人でもある。

そんな中で健太とゆうは恋に落ち、萌と誠の関わりを通して思い悩むゆうの相談に乗っていた。


ゆうは回想をしながら、話をし出す。



「う、う〜ん……それ、誠と俺で話しても良いか?」

「良いけど、私も一緒に聞きたい。」

「良いよ。でも、変に口出すなよ?」

「それは保証出来ない。」

元々看護師のゆうは、誠の、その決断に言いたい事が沢山あった。

(はぁ…こう言う時、頑固だよな…)

健太は心の中でため息を吐く。

「分かったよ…。取り敢えず、話す場を作ろう。
今週の日曜日だったら休みだけど、誠は大丈夫か?」

「分かった。聞いてみる」

何故か怒ったように言うゆうに、健太はビクビクしながら、カレーを掬い食べていた。

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