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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第7章 赤いシルシ
「花菜、こんな所にいたんだね」
「…!?……あ、あ…!」
花菜と不破──ふたりだけだった空きビルの階段室に、別の男の声がする。
顎を掴まれている花菜は声のする方に振り向けず、だが、そこに立っているのが誰なのかを一瞬で悟った。
「…?」
ふいに現れたその人物は、不破の背後──階段の下からこちらを見上げていた。
不破が首をひねり、横目で相手の顔を見る。
そこに立つ人物に面識はない。
「……誰だ」
「……」
「そこで何をしている?」
「──…君こそ」
男にしてはあまり低くない声。それはバリトンの不破と比べることで顕著になる。
しかし、声質や言葉遣いは確かに柔らかいが、発せられた言葉自体には決して丸みがなかった。
「──…君こそ、彼女に何をしているんだい?」
内にたぎる怒りを堪え
空気を震わす圧を込めて。