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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第7章 赤いシルシ
「僕は──…彼女の兄妹だからね」
頭は上げずに床の一点を見つめたまま、彼は言い切った。
「兄妹?…兄貴か」
「そうだよ」
「……?」
そうだったのかと、納得すればいい話。
しかし不破はその答えに僅かな違和感を覚えて、すぐには花菜を解放しない。
「……伊月にぃ……ちゃん……! 助けて」
「……」
壁に押し付けている花菜が助けを求めてうめく。
彼女に視線を戻した不破は
その頬から零れ落ちる涙を見送った後……ようやく、手を離した。
グチ...
「だったら、連れて帰れ」
蜜口から指を抜き、ふらつく花菜を突き返す。
伊月は即座に立ち上がり彼女を受け止めた。
花菜は震える手で兄の服にしがみついた。
「おにいちゃ…ん……」
しがみつく彼女を強く抱き締める伊月。
彼の目はもはや、目の前の不破に向いてなどいなかった──。
──…