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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第7章 赤いシルシ
「わかったさ」
" 通報 " に怯まない不破。何かを諦めた相手の男が、その場に膝をついた。
床に両膝をつけて、改めて不破を見上げる。
「これはお願いだ。どうか…その子を僕に返してくれないか?」
膝立ちの男はそう言って、頭も下げた。
「……」
「どうか……、頼むよ」
「それほど大切なのかよ」
「ああ、大切さ」
不破の質問に、即答だった。
それならば…と、不破は続けて問いかける。
「あんたはこいつの男か?」
「──…」
「答えろ」
「違う」
その問いには答えるまでに間があいた。
けれど、" 違う " と否定したその言葉は、周囲に強く響くはっきりとした声で──
「違うよ」
そして念を押すように繰り返された。