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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第8章 洗ってあげる


「なんて愚かなっ…姿…──ッ」


彼の頬に涙のようなものが見えたけれど

…それは、全てシャワーで洗い流された。




──



伊月が風呂からあがると、パジャマに着替えた花菜が畳の上に丸まっていた。

胎児のように丸まって…よく見ると眠っていた。

「…っ、駄目だよベッドで寝ないと」

「……」

「…? 花菜?」

そんな所で寝たら風邪をひくぞと注意しても反応する気配はない。

近付いて身体を揺すっても、彼女は眠ったままだった。

花菜が起きない──

どうして


「…………ああ」


丸いテーブルに置かれたマグカップ。

それを目にした伊月は、何かに納得して揺する手を止めた。

「いつものココア…。自分で作って飲んだんだね」

キッチンに向かうと、シンクの上にココアの袋が出しっぱなしだ。


伊月がそれを手に取る。


「勝手に作ってはいけないよ。ちゃんと…量を調節しないと…──君の身体に害が出たら大変だからね」


そしてココアの袋を…花菜の手が届かない高い場所に収めた。


「……フ、いや、……君にとっての毒は僕か」


スー スー


「僕にとっての毒も…君だよ」


さて、僕がベッドに運んであげよう。

床から花菜を抱き上げた伊月。

彼は切なく眉を寄せ、寝息をたてる彼女の唇をしばらく見つめた後──

首筋に残る赤いキスマークのひとつに、愛おしそうに舌を這わせた。







──…




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