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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第2章 憧れの……
だから、大好きな兄がこうして出迎えてくれたというのに素直に喜べない。
花菜は彼に窮屈な思いをしてほしいわけじゃないから。
「それより夕飯なんだけど、昨日のカレーを……ドリアにしたい……が、困ったな、やっぱりチーズが見当たらないんだ」
そんな彼女の複雑な心境に気付きようもない伊月は、まだのんきに冷蔵庫を覗いていた。
「一緒に買いに行く?」
「一緒に…? うん! ──…あ、でも…、わたしカレーのままでも全然いいよ」
「まぁいいじゃないか。久しぶりに二人でスーパーまでぶらっと歩くのも」
遠慮を見せた花菜の言葉を遮り、パタンと冷蔵庫が閉められる。
そして伊月が彼女に向けたのは…くしゃりと目を細めた穏やかな笑顔──。
花菜の胸奥をきゅうっと掴み、幸せな光で満たしてくれる優しい顔。
「そう……だね、じゃあ行く!」
そんな笑顔を向けられて、どうして彼女が断れようか。
「行きたい」
「花菜は荷物を置いて玄関で待ってて。ズボンだけ着替えてくるから」
替えのズボンを手に洗面所に入った伊月。
花菜は畳張りのリビングに鞄を投げて、さっき脱いだばかりのローファーに足を入れた。