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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第2章 憧れの……
──
築三十年のアパートを出て閑静な住宅街を二人で歩く。
喧騒的な駅前とは対照的に、この道は昔ながらの喫茶店や定食屋があったりとレトロな雰囲気が特徴だ。
花菜は東京が嫌いだが、ここ周辺の街並みは受け入れられるし、いくつか点在する古本屋は放課後に立ち寄るお気に入りスポットとなっている。
黄ばんだ壁の一軒家も、今にも割れそうな木製看板を掲げるご飯処も…
雑多ながらも「温かさ」を感じられて好きだった。
この道は、お兄ちゃんに似ている
チラ...っ
隣を歩く兄を見上げた花菜。
伊月の誠実で温かい人柄に敬意をはらったこの街が、それに習って自らも失った人情を少しずつ取り戻しているのでは…
そんな想像さえしてしまう。
花菜はそれほど、兄の伊月に憧れていた。