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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第10章 兄妹だから
日暮れを境にいっきに辺りが暗くなる。
「ハァ…ハァ…」
男の背中が見えなくなって暫くしても、花菜の動悸はおさまらなかった。
嵐のように暴力的な
それか、突然襲いかかったかと思えば、何もかもを根こそぎ奪い去ってしまうあの恐ろしい津波のような
…数分前の出来事は、まさにそんな時間だった。
そのおかげで、今の静寂が強調される。
静けさを取り戻したこの狭い道で、花菜は深く項垂れた。
“ あの人……! 本当に、何を企んでいるの? ”
思い返すだけで混乱は増すばかり。
花菜はゆっくりとその場にしゃがみ、不破に捨てられた本を拾った。