この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第2章 憧れの……
地元の離島で暮らしていた時から伊月にはたくさんの友人がいた。
昔から友達と呼べる友達のいない花菜は、そんな人気者の兄が羨ましかった。
兄を羨み──でも同時に、自分は兄のようになれないことを十分に理解していたから、妬みのような感情を抱くことはなかった。
“ わたしなんかがお兄ちゃんみたいになれるわけないもん ”
いいんだ
お兄ちゃんみたいにならなくて
こんなに素敵な人がお兄ちゃんだってだけで、わたしにとっては十分な幸せだから──
「──花菜?」
「……ッ」
不意に視線を下ろした伊月とがっつり目が合ってしまったのは、花菜が彼の顔を凝視していた証拠。
花菜は慌てて顔をそらし、いつもにはない俊敏さで二歩、三歩と前に出た。
それに合わせて、チェック柄のスカートがふわりと広がる。