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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第11章 虚しさという名の快楽
花菜が目を覚まさない限りは
泣くことも怯えることも、笑うことも無い。無垢な目で伊月を煽ることも等しく無いのだ。
“ それに…… ”
そしてこの時間だけは、伊月は "伊月" でいられる。
電気を消した部屋の中──花菜の寝息が続く限り、伊月は彼女にとって兄じゃあない。
ギシ...
伊月が片膝をベッドの縁にのせた。
睡眠という無意識の世界をさ迷う彼女に、そっと手を伸ばした。
仰向けの彼女の頬を撫でる。
愛おしくて仕方がない。暗さで表情が見えなくても関係ない。
片手で覆ってしまえそうな小さな顔は、鼻や唇の形も、目尻から頬骨を上がり顎へ下るラインまで、全てを伊月の指は覚えている。
…今日は瞼が腫れて分厚くなっていた。
「…ごめんね」
伊月はそこに唇を落とした。