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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第2章 憧れの……
「知りたいなら今度、僕と行ってみようか」
「え? お兄ちゃんと?」
「花菜も楽しめる所だと思うよー? きっと」
ポン
前を歩く花菜の頭に手を置いた伊月が、心もとなささえ感じてしまうくらいの強さで控え目に撫でる。
けれどその手つきに対して彼の声は快活で、花菜が提案を断らないという確信が表れていた。
背の高い伊月にサワサワと頭を撫でられ、子供扱いだと感じた花菜はムキになるが──
「─ッ…くすぐったいよぉ」
「行きたくない?」
「い……! うん、行きたい……」
やっぱり、断らない。
それも当然か。
花菜にとっては場所なんて関係ない。伊月と一緒に行けるなら何処だって楽しいから。ケーキ屋だろうがスーパーだろうが同じこと。
“ お兄ちゃんはさ、…それに気付いてる? ”
上目遣いで兄の顔を盗み見れば、自分の反応を楽しむ彼の生き生きとした顔がある。
生き生きと言っても、彼の瞳は穏やかなままで
例えるなら……秋雨の後の雲間から覗く日射しのような、あくまで思いやりの籠った輝きなのだ。