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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者
あんな人、大嫌い
「プリントだってわたしが頼んだわけじゃない。…勝手に、先輩が届けに来ただけだよ」
花菜は目の前の女生徒たちに言い放った。
その声は教室によく通り、そこにいたクラスメイト全員が聞き取るほどだ。
相手から作り笑いが消える。
「はぁ…?」
彼女たちが表情に出したのは明らかに怒りの感情だった。
「ナニ言ってんの、この子」
「何様なの?」
シンと静かになった教室で、小声のやり取りがチラほら起こる。
「すごいヤナ感じー」
「偉そうに……ムカつく」
それ等の小言は攻撃的だ。出入り口に立つ花菜に向けて、それが少しづつ増えていく。
一方で男子たちは「やっちまったな」とでも言いたそうな呆れ顔で黙っていた。
向けられる視線が、冷たく、痛い。
睨み合いのような状態が続くも、相手の数が多いせいで花菜の目線は一点に定まらなかった。
「……っ」
花菜の足が後ろに進む。
すごく嫌な空気の塊に圧迫されて、身体を流されていくような感覚だ。彼女の意志とはほとんど無関係に教室のドアから外へ押し出される。