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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第15章 汚れた安堵
だから悩んだすえの花菜が辿り着いたのが
「先輩が捨てたそれは…大事な物でしたか?」
という曖昧で、語尾を引きずるような自信のない問いかけだった。
「…そうだな、大事だった。だからこそそれを持っていた昔の俺は──…奴隷のように不自由だった」
「奴隷のように……」
「お前らみたいにな」
鼻で笑った。
切なげだったその表情とは裏腹に不破に未練らしき感情はなかった。
花菜を次の言葉に詰まらせておいて、自分はカラリと乾いた口調で話し続ける。
「ここまで来たなら俺の家に寄ってけばいい。すぐそこだ」
「家?でも、急にそんなのお邪魔ですよね?」
「…べつに。その汚い手を洗え、制服もな」
「…あ、制服…」
さっき同級生に付けられたシャツの汚れに彼は気付いていた。
そしてすぐに目線を進行方向に戻して、花菜に背を向ける。
「来るのか?来ないのか」
「わたし……」
学校帰りに寄り道なんて…。
そんなことして、いいのかな。