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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第15章 汚れた安堵
躊躇する花菜の頭に伊月の顔が浮かんだ──。
不破が "妹" だなんて言うから、兄の事を思い出したのかもしれない。
『 花菜は、いい子だね 』
兄の柔らかな声。
『 何かあったらすぐに戻っておいで…──お兄ちゃんのところへ 』
髪を撫でてくれた優しい手。
わたしはその手を…裏切ろうとしている?
“ でも…っ、今日はお兄ちゃん、塾講師のバイトで遅くなるって言っていたし ”
再び歩き出した不破の後ろ姿を見上げた花菜は、頭をよぎる兄の影を振り払うように首を振った。
そうだよ、もうとっくに…裏切ってる
「待って、行きます…っ」
上手に食べることができなかったクレープを握ったまま、彼女は不破の後について小走りした。