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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第16章 崩壊への誘い



これは発信器だ



....




──カタっ..


「…っ」


髪飾りに隠されていたのは、花菜の居場所を特定するための発信器だった。それを不破が確信した時…音沙汰の無かったドアの向こうで動きがあった。

寄りかかっていた壁から背を離し、落ちたリュックを拾ったのだろう。

ドア向こうの人物は立ち去る前に再び動きを止めて、まるで透視しているかのように…ドアを挟んだ不破と目を合わせているかのように…

真っ直ぐこちらに顔を向けている。

それは不思議と室内の不破にまで伝わった。


「君が……僕たちを壊すだって?」


フッと口の端で笑っている。

その光景すら想像できてしまうくらい、生々しい声色。

いつもの客観的で掴み所のない声ではなかった。



「何をもって " 壊れている " とするのか…」


「……!!」


「…君にはわかるのかい? 君に僕たちを壊せるの? なら──…僕たちがまだ壊れていない事を証明しておくれよ。できるものなら」



語尾が遠のいた。

彼が顔を背けたのか。



「できる ものなら……」



最後のひと言は背中越し──。

それから階段を降りる音が響く。

痛む足を引きずるように……一歩、一歩をゆっくりと降りていく。



愛に狂わされた男の弱さを

…その、異常さを、不破に思い知らせながら。







──…




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