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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
──…
「おやまぁ伊月くんじゃないか、久しぶりだねぇ」
「…?」
下宿先のアパートへ向かう帰り道。
夜道をよたよたと危なげに歩く伊月を、近所の古本屋の店主が呼び止めた。
祖母と変わらない歳の気の良い老婆は、店先に置いた木椅子に腰掛けたまま伊月を手招く。
シワが刻まれた小さな手をちょいちょいと動かして……まるで操り人形の糸を手繰るように。
「煮物の味付けを教えてもらって以来ですねお婆ちゃん。どうしました?」
「いいからお来んなさい、お来んなさい」
伊月は親しげな笑顔で老婆の手招きに応えた。