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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て



なら 今の "僕" は誰だ?



「ハァっ……、花、菜……」

「……」

「起きて…いたんだね。いつから……?」

ゆっくりと…徐々に呼吸を整え始めた伊月は、小さく丸まっていた身体を起こして花菜のほうへ振り向いた。

ローテーブルからは未だに液体が滴り、布団の上に垂れているが気に留めない。

湿って身体にへばり付くシャツを脱ぎ捨て、上半身を暗がりの室内へ晒す。

「だめじゃあないか…っ…。起きたならちゃんと教えてくれないと…!」

嫌な汗がまだ全身に残っている中

伊月は掠れた声で精一杯…奇妙なほど優しい声色で話しかける。

「…もう、怖くないから…。安心して目を開けてごらん」

「……」

「大丈夫さ怖がらないで?…っ…ほら、はや く」

「……ッ」

「はやく………僕を………」

まるでペットのお産を見守る飼い主のような声かけだった。

弱ったその身を労りつつ
怖さを和らげようと、優しく励ましながら
待ちきれなさから、若干の急かしを込めて。


…しかし花菜は無反応だった。

伊月が何を言ったところで彼女は目を開けない。


「花菜……!」


すがるように名を呼んでも、仰向けの彼女は動かない。

動いたのは一箇所だけ。

先ほどまで半分開いていた口だけがキュッと閉まり、震える下唇を噛んでいた──。

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