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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て


伊月は泣いていたのだ。


「僕を見てくれ……」


それは彼女への申し訳なさからくる涙でも…

自身の行為を悔やむ涙でもなかった。


「僕を見ろ!!」


相手のいない天井へ怒号する。

手の甲を額にのせ、目を閉じる。

押し流された涙が目尻から頬を伝った。


「一度だけでいい!たった一度でいい…!! 頼むから!それで…ッッ…諦めるから」


「……ッ」


「君の前から消えるから…ッッ……二度とこんな……こんな……非道な事はしない…!! 遠くへ消える!約束する!…だか ら……お願いだ……どうか」


極度の衰弱と絶望と──

自身が望む愛の形とあまりにかけ離れた

異常さを


嘆くばかりの伊月の目頭に、こらえ切れない涙が溢れる。




どうすればいい


どうすれば逃げられる




「一度だけでいい──ッ…………僕を
 僕を、見てくれ………!!」




既に喉が潰れたか。

彼が最後に発した言葉は、只、呻き声としか聞こえなかった。



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