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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第19章 シロツメ草の記憶
翌朝。
外は晴天だった。
床で眠っていた伊月が目を覚ました時、カーテンの開いた窓の向こうから射し込む光が室内の壁を局所的に照らしていた。
信じられないほど重怠い身体を起こした伊月は、その照らされた壁を眺める。
スポットライト的に浮かび上がる白い壁──
けれど壁以外の誰か人間がそこに映し出されているわけでもなく、それ以前に、部屋にいるのは彼だけだった。
「…………」
時計を見れば、すでに朝も半ばを過ぎていることがわかった。
高校なら1限目の授業が終わっている頃だろう。
ただ部屋の隅に製鞄が置きっぱなしであるから、彼女は学校に行ったのではないらしい。