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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹
奴隷のように臆病で窮屈で
がんじがらめなあの二人が
本当は何に縛られていたのか。何に怯えているのか。
『 僕たちがまだ壊れていない事を
証明しておくれよ 』
不破はナースステーションの前を横切り、並ぶ病室にそって進んでいく。
花菜に合鍵を返していた例の女とはチラリとも目を合わせず、彼は伊月が眠っているというその部屋に向かった。
病室の前にはそれぞれプレートが貼ってあり、患者の名前が書かれている。
「──…」
それを目で追い歩く不破は
一番奥の部屋の前で、靴音を忍ばせ立ち止まった。
「………クク」
あんたが、正しかったな
「とっくに壊れてやがる…──」
彼はそこで中に入るのをやめた。
遠慮したとか…そんな人並の気遣いは持ち合わせていない。
ただ不破はこの瞬間に理解したのだ。
あの兄妹が沈んでいる闇の深さ。
救いようのない闇の片鱗を──これまで抱いてきた全ての違和感を説明しうる、ひとつの解答とともに。
──…